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びわ湖ホール『ばらの騎士』 2024年3月3日(日) [オペラ]

 楽しみにしていたびわ湖ホール、阪哲朗さん指揮『ばらの騎士』です。土曜が半ドンの仕事なので、土日公演の時は、歌手に関わりなく日曜にでかけてます。
 幕が開いて始まると、なんか、オケの音が揃ってなくって、あれあれという感じでした。シュトラウスのオペラのオケパートって、やっぱし難しいのかなぁ。ちょっとびっくりしてしまいました。
スキャン_20240303.jpg 1幕の舞台は、何か広い空間を持て余しているかのようなMarschallinの寝室のセットです。女性同士のラブシーンは思いの他ぎこちなく、歌にも何か感情移入がしづらかったです。しかし1幕は、歌手の方々、よくあれだけ難しそうな曲歌えるなぁと感心してしまいます。Baron Ochsの斉木健詞さんが入ってこられてから、少し流れが変わりましたが、それでも睡魔に襲われて目を開けているのがやっと。客が帰って、MarschallinとOctavianの二人になってから、音楽はしっとりした方向に変わっていき、内容もMarschallinの内省的な気持ちになっていき、やっと集中して聴けるようになりました。これもすべて、私の今までの『ばらの騎士』を聴く姿勢がなっていないから。2幕のばらの献呈の場と3幕の女声三重唱以降しか聴いてこなかったから、まったく音楽についていかない。やっとここになって好きなモティーフが出てきて、お話がつながってきたという感じでした。そうこうしているうちにMarschallinに感情移入してしまって、涙が出てぽろぽろ出てきました。
IMG_3086.JPG 2幕は大好きなばらの献呈があります。そこまで音楽もワクワクしたものですし、私もワクワク感がそそられます。やはりOctavianが登場するシーンはワクワク感もマックスです。今回はオケのtuttiの音が若干ずれたようで、少し残念でしたが、それでも、あぁ、と息が漏れてしまいます。ドタバタシーン、たくさん人が出てきて、凄いなぁ。Octavianの山際きみ佳さん、よくがんばってはりました。Sophieのお父さんもよく声を響かせて気持ちがいい。しかしやはりOchsの斉木さんが劇を回している感がひしひしと伝わってきます。ワルツもとっても洒落っ気たっぷりに演奏されていました(ってもともと楽譜からそうなのかなぁ)。幕の最後の斉木さんの低音のロングトーン、凄かったです。仰向けに寝転んで、しかもあの低い音をあれだけ長く。いやいや、1幕とはうって変わって、2幕はとっても面白かったです。一緒に行った友達二人とも2幕は面白かったと喜んでいました。
 さて、3幕の舞台は、田舎のレストランには見えない広い間取りでしたが、このホールの幅を全部使っちゃうとこんな間延びした感じになるのかぁ、とか思いながら前半のドタバタ劇を楽しみました。Octavianが男に戻って、Marschallinが登場して、Ochsが退場すると、もうここからは私の大好きな場所なので、本当に神経が研ぎ澄まされます。と同時に、もう3重唱が始まる前から涙がボロボロ出始めて、ほぼ幕切れまで涙々で、ハンカチはグシュグシュになってしまいました。歌手も大変だろうし、オケも難しいだろうし、長い息の音楽を堪能しました。思えば私、このオペラはやはりこのMarschallinが意を決して去って行く様が一番好きなんだなぁ。Marschallinが去る間際に後ろに手を差し出してOctavianのキスを促すシーンなど、涙なしには観られない。In Gottes Namen! 今年還暦を迎えて、私も今までの何かにしがみつかないように生きていかないと。その後、大好きな二重唱。まるで天国にいるかのよう。唯一のがっかりは、ソプラノの最後の音の音程が上がりきってないかのように聞こえたことくらいです。
 
 カーテンコールの順を見ていると、Sophie - Octavian - Ochs - Marschallinでしたが、舞台に出てる時間の長さから言うとOctavianとOchsがダントツですが、やはりこの劇はMarschallinのためのお話なんですね。私もこの役にボロボロ涙こぼした訳ですし。一緒に行ったうちの女性の友達は、Octavianはダメンズそのものやね、ってバッサリ。しかし、このGenderについて何やかやとうるさくなった今の社会では、この劇の扱いは厳しいんだろうなぁ。

 楽しませてもらった一日でした。
 
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ヴェルディ: 歌劇『ナブッコ』 METライブビューイング  [オペラ]

 映画館でVerdiの"Nabucco"をMET Live Viewingで観てきました。だいたいこのLive Viewing、中途半端な時間にやってるから、働きに出ているとほぼ観られないし、これ一つで休みの日一日を潰さないといけないから、ほぼ観にいけません。明日がたまたま私としてはゆっくりした土曜日になるので、今日は出かけて観にいくことにしました。うちの町では今日から始まりました。比較的たくさんの方が来られていましたが、ほとんどが私かそれ以上の歳の人たちでした。

 歌手の名前を見て、以前Royal OperaのMacbethのビデオで観たことがあったAbigaille役のMonastyrskaだけでしたが、この『ナブッコ』は大好きな演目だから、少しワクワクしていました。
 演出は以前ビデオ化されていたPonsとGuleghina盤と同じもの(2002年の録画だからもう20年以上前の製作になる)で、Metらしいゴージャスなものでした。読み替えものではないので、観ていてストーんと入ってきます。神殿を燃やすシーンでは本物の火で焼いたり、ベルの神様(どんな神様かは知りませんが)にイナゴのような偶像を作ったり、合唱団も多いですし、衣装もとっても華やかです。アメリカの人たちって、合唱団の人に至るまで、本当に大きな人が多いなぁという印象を受けました。
 一番気に入った歌手は、題名役のGeorge Gagnidzeで、体つきからは想像できないような明るい声のバリトンで、本当によく響きますし、目力が強く、表情が本当にわかりやすい。生で聴いてみたいなぁと思う声でした。ジョージア出身の歌手で、英語のインタビューは少し辛そうでした。
 IsmaeleのSeokJong Baekも声が綺麗だし歌もとっても巧い。朗々と響かせる歌がなんとも気持ちがいい。この人も是非とも生で聴いてみたいです。韓国出身だと思うのですが、こうした素晴らしいテノールが出る国って羨ましいです。日本じゃこの声質のテノールは、なんかどこに行っても年輩の同じ人で、あまりうまく後進が育ってる気がしない。日本もどんどんこの声質の人を育てて、活躍の場を広げ、次々と輩出してもらいたいなぁと思いました。
 AbigailleのMonastyrskaは、ちょっと声でぐいぐい押してくる人なんで、この手の役柄では仕方ないのかもしれないけど、私としてはちょっと苦手な歌手かもしれません。この役やTurandot、Lady Macbethと言った役柄がこういう声を必要とするので、そういった役柄自体、私が好きではないのかもしれません。凄いなぁとは思うけど、CDで聴きたいとは思わないかも。このソプラノもビデオで観たGuleghinaもウクライナ出身だそうで、インタビューでも平和を祈る言葉を言われてました。
 FenenaのMaria Barakovaはロシア出身のメゾ。私には可もなく不可もないという感じです。主役級の人の中で唯一細い人という印象でした。ZaccariaのDmitry Belosselskiyは、ちょっといただけない。大きな人なのに声量がないし下が出ない。レガートで歌っている訳でもない。この人もウクライナ出身だそうです。
 しかし何をおいても合唱の素晴らしさ。この演目自体が合唱をよく使っているからかもしれませんが、それだけでワクワク感がありました。
 ナブッコって、あまり日本ではやらない気がします。コロナ禍が始まって、どんどん演奏会が中止になったとき、チケット買って楽しみにしていた海外引っ越し公演(確かパレルモだったかなぁ)も案の定中止になり、生で観てみたいなぁと思いながら帰ってきました。
https://youtu.be/pHNDnzM2HbU?si=Iu-nyJLrSnN0nvaJ
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1/31 ファン・ディエゴ・フローレス テノール・コンサート [オペラ]

 東日本大震災の年の5月、高いチケット代払って楽しみにしていたフローレス、キャンセルして来日せず、すごく嫌いになりました。このブログでも書いている通り。でも、時が経って、やっぱしフローレスの声は大好きで、Blu-rayやらCDやら買って聞いていました。それから何回か来日していたのですが、関西には来ることなく、聞きに行けずじまいでした。私も今年還暦、仕事もほぼほぼ休日出勤の代休も取らず生きて来たので、それなりに経済的にも大丈夫だし、2日間年休とって東京文化会館まで行って来ました。
  
florez1.JPG 前半はモーツァルトとロッシーニです。
 モーツァルトはなんかフローレスには勿体無い感じがしました。始まったばかりなので、私の方も気が十分に入っていなく、綺麗だなぁ程度で終わりました。Don Giovanniの“Il mio tesoro intanto”はよく知ってることもあって、喉の力の抜けているロングトーンは、流石だなぁと思って聞いていました。
 ロッシーニはたった1曲、Guillaume Tellの“Ne m’abandonne point, espoir de la vengeance!”だけでしたが、大きなアリアなのでとっても楽しめました。これは私の偏見なのか、彼の声はロッシーニがとても合う気がします。Blu-rayやらCDで聴き慣れているからかもしれません。特に後半、長い息で盛り上げていく様子は絶品でした。hi-Cも出てくるし、これぞフローレスと感じです。この曲だけで、東京まで来て良かったと思える内容でした。割れんばかりの拍手。
 本当ならカヴァティーナ=カバレッタ(この曲もそう呼ぶのかな)の間に拍手をするのは良くないのでしょうが、拍手は止まることなく、フローレスも指揮者も少し戸惑い加減。オケの人たちも楽器を構えたまま。案の定後半始まる前に、曲が最後まで終わるまで拍手はしないようにとのアナウンスがありました。でもロッシーニ音楽祭のビデオを観てても、大概の観客はそこで拍手してるんだけどなぁ。

 後半は私の大好きなヴェルディです。と言っても頻繁に聞くアリアではないですし、フローレスがヴェルディっという想いがあったので、最後までこのコンサートを決心するのを躊躇った理由でした。でも、いやいや、これが本当に良かったです。
 Rigolettoの“Questa o quella”は、ドレースデンでのダームラウとのビデオで見ていましたが、短くって、2部の演奏をする準備になるのかな。仮面舞踏会の“Ma se m’è forza perderti”を聴いて、フローレスのこのオペラ全曲を聴きたくなりました。フローレスももう50歳、テノール歌手のキャリアも後半になって来て、声もロッシーニより太くなってきています。これからはこの路線のフローレスを聴いて行きたいという気持ちになりました。マントヴァ公爵からリッカルドに変わるのに、曲間で役作りをしている姿がとても印象的でした。続くI due Foscariの“Dal più remoto esilio”くらいから、フローレスの歌唱があまりにもドラマティックになっていくので、どの曲もIl Trovatoreの“Di quella pira”かと思わせる感じがしました。カバレッタはフローレスだけに安心して聴ける内容でした。ヴェルディが生きていたら、ちょっと腹を立てるんじゃないかと思わせるヴァリアンテがありましたが、それも含めてとても美しく、大満足でした。Attilaの“O, dolore! Ed io vivea”もルイーザ・ミラーの“Quando le sere al placido”も、曲想もある程度似ているし、ヴェルディの旋律が美しいカンタービレで歌われて、後半激しく盛り上がって終わるたびに大拍手です。
 選ばれたヴェルディの曲は、中期までのどちらかというと軽い声用のアリアで、最初はフローレスの実力からして、ちょっと簡単な歌ではないのかなぁ、と思いましたが、その余裕をしっかりと歌の表情に活かせてくれていて、こうして選ばれている理由も納得がいきました。

florez2.JPEG アンコールはギター弾き語りでラテン・アメリカの歌です。オペラ歌う表情とは全く違い、デューナミクがより一層ついて、泣きも入る。本当に聞き入ってしまいました。“Cucurrucucu paloma”、胸に染み入りました。もうこれだけでも十分なのに、“Una furtiva lagrima”と、もう本当に最後だよと言わんばかりに“Granada”。大満足で帰りました。
https://youtu.be/Q7yfsNFoUvk?si=1yLuL_rGB4upjtSH
 本当に来て良かった。フローレス、もっとファンになりました。オペラ聴き出して、もちろん3大テノールも現役でいましたが、経済的に生で聞くことができませんでした。こうして生で聴いていける歌手の中で、僕の中では1番の歌手だと思っています。

florez3.JPEG ホール出たら、たくさんの人が出待ちしていたので、私も近くのホテルに帰るだけだし、いっしょに待って、近くでフローレスを見ることができました。
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マスネー『ウェルテル』への思い [オペラ]

 今日はクリスマス・イブ。最近暗いこの世の中も、クリスマス・イブの今日は、さすがに特設ケーキ売り場があちこち出てたり、ケンタッキー買って帰っていくお母さんがちらほらいたりして、ちょっと楽しそうです。独り者の私は、夕方、教会のミサには行きますが、さしてすることもなく、中華屋で定食でも食べようと思っているくらいです。
IMG_2335.jpeg 私もそれほど“明るい”クリスマスというわけではありませんが、もっと暗いクリスマスになる主人公がいるオペラのお話です。マスネーの『ウェルテル』。3幕にあるウェルテルのアリア "Pourquoi me reveiller" に惹かれて、ここ数週間ヘビーローテーションで聞いています。元々持っていたのはAlagna盤ですが、今回の熱でCarrerasとvon StadeのCDと、FlorezのBlu-rayを手に入れました。
 12月はとても忙しいので、前曲を聞く時間は到底持てませんが、今お気に入りのアリアがある3幕、それに続く4幕を仕事のBGMでかけて聞きました。BGMなんで、あんまり本腰を入れて聴いているわけではありませんが、それなりに感想を。

 なにせオケ伴奏が分厚くって悲劇悲劇しています。マスネーはフランス一のワグネリアーナーということですが、私にはプッチーニに近く感じるくらいです。二人とも『マノン』書いてるくらいだから、同じ時代の人なのでしょうが...。
 Alagnaはとても英雄ぽくって、しかも本当に強いだけの英雄ではなく、陰がある英雄ぶりがこの役にとても合うなぁと思います。私的にあまり高く評価できないGheorghiuの歌もとってもしっくり聞こえます。まだご夫婦だった頃の録音なのでしょうか。息も合っています。

https://youtu.be/EWvbaw4IS2U?si=9woN1BpU9YyiNdmx
 YouTube見て、このFlorezの歌は情感たっぷりで気に入って、映像のパッケージを探すと出てきたのがチューリッヒでの公演映像。舞台が狭く狭く設定してあって、ウェルテルの置かれた閉塞感は伝わってくるのですが、舞台としては少しなぁ。Florez、とっても巧いのですが、こんな歌手だったのかなぁと一息。Rossiniが凄かったけど、こんな重い歌を歌うのだなぁ。Sharlotte役が私にはもう一つで、もうウェルテル飽きてきたかなぁ。
 と思った矢先に届いたのがCarrerasとvon Stade盤。Carrerasのひたむきな歌に惹かれてしばし聴いてしまいました。von Stadeの素朴な歌い方もとてもあってる。もう一度これを中心に聴いてみたいと思っています。

 そもそも、Pourquoi me réveillerのアリア、どうしてこうもできがいいのかなぁ、と図書館でヴォーカルスコア借りて見てみると、歌と伴奏に少しずれがあるところが味噌なのかなぁ。
 歌い出しの旋律が、先にオケ伴奏に不安定な形で現れ、そのままアリアとなります。ほぼほぼハープのアルペジオの上で歌われていくのですが、山場となるところでオケ伴奏が先に旋律を奏でると、それを追っかけてテノールの旋律が就いていく、オケの強音のトゥッティの前にはテノールの旋律は先走ってAisのアクートとなってる。第2節は、それこそ歌い出しの旋律を先にオケが奏でてしまい、オケの対旋律に煽られながら、山場でまた第一節のようにテノールの旋律が追っかけて先走りのAisのアクートにオケの強音トゥッティ。伴奏とテノールのずれでうまく主人公の心の揺れを表しているのでしょうね。聴いているこちらの気持ちが煽られる煽られる。

 ということで私はクリスマス・イブのミサに出かけてきます。ウェルテルのようにピストル自殺は決していたしません。 
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映画『ゴジラ-1.0』 [映画]

IMAXで『ゴジラ -1.0』を観てきました。ネタバレしない程度に書きます。

 勿論ゴジラが主体なのですが、今回のゴジラは、戦争末期から終戦直後の時代を生きる人々の人間ドラマが描かれていて、とも面白かったです。
 IMAXで観て一番の感想は、ゴジラが本当に怖かったこと。こんなにゴジラって怖かったのかなぁと今更ながら思うほどでした。シン・ゴジラの時もそうだったのだと思うけど、本当にゴジラって生物そのもので、怒り以外の感情は持ち合わせていないのかと思うほどでした。
 いただけないのは、本編が始まる前に3本程宣伝があって、それがあまりにエグくて、顔を背けていたし、音も厭でした。あれはちょっと拷問に近い。
 ゴジラに纏わるお話というと、いつもとパターンは同じで、急に東京がゴジラに襲われるから、どうやって退治するかに尽きます。でもそれ以上に今回は人間ドラマがあり、戦争を生き延びてきて、みんなが自分の生きる意味を探し求めるというところに焦点が当たっています。それがかったるいという評もあるようですが、私のように齢を重ねると、その思いや周りの人たちに対するどうにもできない思いが胸に響き、何度も涙してしまいました。
 今回はそれに音楽の扱いもよかったと思います。ゴジラというと初代ゴジラの伊福部さんの音楽がガンガンなるのが常ですが、今回の映画は、最後の作戦実行の時だけしか使われません。それがとっても効果があった気がします。
 音楽に限らず、初代ゴジラのオマージュはそこかしこに見られます。ゴジラが歩く音や、鉄道やジャーナリストのシーンもそうでした。面白いのは初代ゴジラ制作時より、時代設定は古いはずですが、映像で表現されている描写はそうではないようでした。
 神木隆之介がとても巧いなぁと思いました。こんなに表情を巧く出すのだなぁ。安藤サクラ、いつもいつも味のある演技で嬉しいです。吉岡秀隆は、なんだかなぁ、長く俳優してはるのに、素人みたいだなぁ。もしくはそれが演技なのかなぁ。
 帰ってきて人の評を見ると、よく言う人と悪く言う人と。私は感銘を受けて帰ってきた口です。
https://youtu.be/x7ythIm0834?si=9jMVyVWcNpUJCePK
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シュトラウス『こうもり』 2023.11.19 びわ湖ホール公演 [オペラ]

 朝7:15に出勤して退勤が20:00より早まることがない毎日、今日のオペラもほとんど気にできていませんでしたが、さて明日はオペラと思い、フライヤーを見てびっくり。凄い布陣。
fledermaus1.jpg 満を持して遅刻しないように家を出ました。席はいつもの大好きな場所。
 この公演の一番の見所は、舞台を明治の日本に移し、漫談風の解説付きで上演です。セリフは日本語で歌唱はドイツ語でした。舞台装置は畳が八枚を色々動かして作っていくという仕掛けでした。
 演出が野村萬斎なので、それはそれでよいし、とても面白かったのも事実ですが、この『こうもり』という喜歌劇のシャンペンの泡のようなイメージとどうしても結びつかないので、音楽がしっくりと入ってこない。美しい着物姿、明治風の洋服もきれいですが、なんせ音楽が入ってこない。もちろんポルカなどの踊りはないですし、ガラもありません。
 歌手的には、ファルケの大西宇宙さんがダントツに巧かったです。つやのある声で、歌唱に力みがない。なのに堂々とした歌いっぷりに魅せられました。前回の兵庫の『ドン・ジョヴァンニ』題名役から気に入っていましたが、今回はその思いがもう一つ奥に進みました。歌だけではなくセリフ回しもとても巧い。これからも続けて聴いていきたい歌手です。
 オルロフスキーの藤木大地さんは、折角の男前が顔白塗りで少し残念。でもセリフからファルセットで、安定感あるカウンターテナーパートが嬉しかったです。ただカウンターテナーはあまり強い声を出せないのか、オーケストラや共演者や合唱の声に埋もれてしまうことも多いので、少し気の毒でした。
 ロザリンデの森谷真理さん、あれだけ地声でセリフしゃべっての歌唱はしんどかったのではないかと思うのですが、よく伸びる柔らかい声がよかったです。チャールダッシュのソロもかっこ良かったし、なにせ演技が堂に入っていました。
 アルフレードの与儀巧さん、かなりアドリブも入れて、よく頑張られていました。歌もとてもよかったです。
 アデーレの幸田浩子さんは私には少し硬く響きました。声のコントラスト的に森谷さんとはよく取れているのですが、硬質な響きが聴いていて少し辛かったです。
 アイゼンシュタインの福井敬さんは、最初福井さんとは思えない歌唱だったのですが、それもそのはず、アイゼンシュタインは確かバリトンだったような。美しく響く中音域は、テノールで主役を張ってこられた彼の声とは違う感じで、とてもいいなぁと思いました。ただ大西さんと二人で歌うと、大西さんのつやのある若い声とは違うなぁと思ってしまいましたが。
fledermaus2.jpg 桂米團治さん、序曲前の講釈があまりに長いので、このまま演奏中もこれが続くのかと思いましたが、始まるとそうでもなく、うまく短く解説を入れられていくので、それは楽しかったです。
 しかし、演出的に、今日は面白かったですが、このように日本風に置き換えたものが続くと、シャンペンの泡からはほど遠い響きに聞こえ、退屈してしまうかもしれません。
 阪哲朗の指揮、びわ湖のオペラは初めてだと思いますが、しつこくブーイングする方がおられました。私はオケに対してはそこまでの耳も持ち合わせてないので、傍観していました。
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ベルリーニ『ノルマ』 ボローニャ歌劇場・びわ湖ホール公演 2023年11月11日 [オペラ]

 久しぶりのボローニャ歌劇場引っ越し公演です。最近は日本の歌手の皆さんも聴き応えがあるので、わざわざ引っ越し公演もなぁとは思いましたが、イタリアのオペラ・ハウスの演奏は、日本では聴くことができないカラッとした響きが魅力的なので、ちょっと値段がお高いのですが、思い切って久しぶりに行くことにしました。
スキャン_20231113.jpg
 名前を知ってる歌手は、恥ずかしながらテノールのバルガスだけでした。ガンガンと歌うというより、丁寧に響かせて歌っている感じがしました。プロフィールを見るともう60を超えているそうですが、そうとは思わせない歌いぶりでした。アダルジーザの歌詞にある「凜々しいお姿にため息をつき、魅せられてしまいました」とはちょっと違う体型をされていましたが、それはそれはそれでご愛敬。
 ノルマを歌ったドットは、一幕では声が平板で、一生懸命響かせようとしているのか、少し無理があるのではないかと思う歌い方でした。初めて登場する場面もかなり強い声で歌われるので、少し驚いてしまいました。続くCasta Divaは、倍音で声が美し響いているというより、頑張って歌っている印象が強く、息の長い美しい旋律を楽しむことは私には少し難しかったです。2幕になると、声も随分でるようになってきたようで、安心して聴けるのですが、後半がヴェリズモのように激しい歌い方になっていき、聴いてる私も劇に引き込まれてはいくのですが、様式的にはどうなのかなぁと疑念を持ってしまいました。
 アダルジーザは日本人の脇園さんで、この人が一番巧かった気がします。テンポをうまく揺らしながら、無理のない声で歌い継がれていきます。かといって主役を喰ってしまうような歌ではありません。あまり配役を知らずに行ったので、最初はずっとイタリア人と思っていたほどでした。
 大好きな2幕始めのノルマとアダルジーザの二重唱は、前半が少し早いテンポで、もう少し二人の声を楽しませてもらいたいと思いました。後半のカヴァレッタ、省略もなくリピート部分が歌われたのですが、あの友情の歌の後ろで、3組の男たちが戦っている様子が描かれ、少し視覚的に邪魔だし、音楽にも合っていない演出に疑問がありました。
 オロヴェーゾのコンチェッティ、とてもよかったですが、2幕のソロで、会場はあまりノルマというオペラをよく知らなかったからなのか(勿論私もそれほどよく知りません)、拍手がまばらだったのが気の毒でした。
 さすがイタリアのオペラ劇場だなぁと思ったのが、テンポが揺れるてもたじろがないし、歌手もそれなりに揺らしてくるけど、しっかり指揮者が寄り添って伴奏をしてくれる。これってすごいなぁ。それにまるで歌舞伎かと思わせる見得を切る演奏も手慣れたものでした。だから聴いている方はわくわく感がありました。
 演出は細かくされているのですが、舞台装置がほぼなく、人だけが動くのですが、なにせ合唱が素晴らしいから、それだけでも楽しめました。ただ、火あぶりの刑とあれだけ繰り返されて言われるのに、結局ノルマがポルリオーネを短剣で刺して、すぐ後に自分も刺して自害するっていうのは、ちょっとどうかなぁと思ってしまいましたが、歌が中心だからこの際いいかなぁ。
 最後に、ノルマのストーリーは、少しついて行けない。勿論、オペラは「こんなことありへんわ」ってストーリーだらけなのですが、ジェンダー的にも、なんかサラッと、何これ?っていう言葉・行動がなされる。歌の旋律美がなければ、あまり感情移入しにくい内容だなぁと思いました。

 でもでも、やっぱし行って本当によかったです。
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ヴェルディ『アイーダ』終曲 [オペラ]

IMG_2262.jpeg 最近はあまり時間がなく、オペラの全曲を聴き通すだけの余裕がありません。それで考え出したのが、オペラの大好きな曲(重唱やコンチェルタートが中心)を聞き比べていくことでした。
 これで第二弾になりますが、今回はAïda終曲です。初めてこのオペラを聴いたときからこの終曲が好きで、私の葬式の時には流してもらいたいと思うほどでした。初めて聴いたのはKarajan, Tebaldi, Bergonzi, Simionato, Wiener Philharmoniker盤で、未だにこれが私のAïdaのベスト演奏ですが、その後、CDが安くなったこともあり、色々なAïdaを買い集めるだけ集めて、ほとんどまともに聴いてこなかったから、今回は目からうろこのいい演奏もたくさんでした。

 基本的に1960年代辺りのDeccaの録音は、Sonic Stageの音場の取り方が好きです。上記Karajan旧盤と、Solti指揮、Price, Vickers, Gorr, Opera di Roma盤は、どちらも最初は主役二人にスポットライトが当たっている感じなのですが、合唱やAmnerisが登場すると、スーッと二人の音が下に降りていき、残響があるような感じに、そこからAmnerisにスポットライトがあたり、その後方に合唱が聞こえるようになります。主役二人だけ多めにエコーが架けられ、下にいるという響き方をします。こうすることによって主役二人の天への旅立ちと、Amnerisの悲しみに焦点が当たる気がします。Karajan旧盤が最高と思っていましたが、Solti盤もとてもしめやかに終わっていく様子がとても気に入りました。と言ってもAmnerisの最後の祈りはSimionatoに尽きますが...。
 Karajan新盤、Muti盤、Abbado盤はどれも主役二人が常に前の真ん中にいて、Amnerisと合唱は上、もしくは奥から聞こえてくる感じで、あくまで主役二人に焦点があたっています。それはそれでよいのですが、最後はAmnerisと合唱だけになるので、最後まで奥まった音で終わっていく感じがあります。

 歌手的には、Aïdaは私的にはダントツにTebaldiです。こういった幾分硬派な役柄はTebaldiがとても合うと思っています。Freniは美しい声で本当に安定感のある歌唱ですが、Puccini的な可憐な主役のイメージがつきまといます。Caballéは優雅に聞こえすぎる感じがしますし、私は彼女の中音より低い声があまり好きではありません。Priceが太く強い声で、Tebaldiとはちょっと違うけど、とても巧いし、今回いいなぁと思いました。Ricciarelliは高音でsotto voceを使おうとするためか、ここでは少しヒステリックに響く感じがします。 
 RadamésはBergonziの滑らかで艶やかな声が好きですが、Carrerasの誠実で英雄らしき直情的な歌い回しがとても好感が持てます。DomingoはMuti盤では、録音の関係か、強音になるとオケとAïdaに声をかき消されてしまいます。Abbado盤ではとてもよく伸びる声に魅せられますが、少し声が甘すぎるのではないかなぁ。死を前にして少し悲壮感がない気もします。Vickersは、いくつかCD全曲盤を持っているのですが、あまり聴いておらず、声も聞き慣れない感じでした。他の歌手に比べると太くマッチョな声で、将軍によく会う声だなぁと思いました。
 AmnerisはSimionato の優しい追悼の気持ちが伝わる声が一番です。Gorrはなんか少し短い感じがするのはなぜでしょう。Cossottoはまだまだ勢力のある強い女性が垣間見られます。次の人を探そうとっていうことかなぁ…。Baltsaはデュエットに絡む部分がほぼ聞こえません。まるで天上にでもいるような音場の取り方はどうなんだろう。
 録音で言うと、私の持ってるCDででは、EMIの2つが、Volano al raggio dell’eterno dì.が響きすぎて割れる寸前なのがいただけません。(やっぱしEMIの録音は好きではない…。)

 こんな聴き方をしてみると、テンポの取り方、音場のあり方、アンサンブルの捉え方など、深まって行って面白いですし、好きなオペラの好きな箇所なので、飽きることなくじっくり聞けます。続けてアップしていきたいです。
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2023 道東旅 #2 霧多布岬・霧多布湿原 [旅]

20230807  霧多布 (10).JPEG 霧多布の二日目は雨。車なしで、バスも日に3本、借りて走り回ろうと思っていた自転車も貸し出し中止。カヌーも中止の連絡を受けていましたが、霧多布里のご主人が、折角頼んだんだから、ネーチャーガイドしてもらうといいよ、とのことで、頼んでみると快諾。ヴァンで迎えに来てくださり、まずは霧多布岬に連れて行ってくださいました。
20230807  霧多布 (14).JPEG 最近、ラッコ生息で人気に火が付いた場所だそうで、この日は雨で人が少なかったけど、観光バスでも乗り付けてくる場所になったそうです。
 夏だと思って薄着しか持ってきていない私たちに、暖かい上着と上下のレインウェアーを貸してくださり、長靴に履き替えて移動です。これがないと寒さに震え上がっていたことでしょう。
20230807  霧多布 (21).JPEG 岬への自然歩道に入るとすぐにガイドさんが、ラッコですよ、って。見てみると本当に小さな点が二つ。あれじゃ素人の私たちではきっと見つけられない。双眼鏡も用意してくださり、見てみると、あぁ、なんてかわいい。
 しかし気持ちよさそう。外敵が少ないのと、波がそれなりに大きくならないのと、食物が豊富なのがこの岬にラッコが自生するようになった理由なのだそうです。最初は定着が確認するまで宣伝をしないでおいたそうです。


 いくら見ても飽き足らないラッコ、しばしお別れで岬まで散歩です。さすがのガイドさん、どの植物についても細かく説明してくださり、本当に歩くのが楽しい。
20230807  霧多布 (9).JPEG20230807  霧多布 (8).JPEG20230807  霧多布 (7).JPEG
 帰りもまたラッコ見て、また釘付け。どんどん集団が大きくなってくる。後ろ髪を引かれながら、次の訪問地へ。

 と思っていると雨もかなり緩くなってきたので、霧多布湿原で少しだけカヌーをしましょうと言ってくださり、待望のカヌーです。
20230807  霧多布 (24).JPEG 細い通路を通り抜けていくのですが、最初はまだ川なので丈の長い草が生えていますが、下流に向かうと海水が入ってくるので、背の低い草になってきます。そうすると川もどんどん開けていきます。
20230807  霧多布 (29).JPEG ガイドさんがたくさん動物の説明をしてくださります。チドリたちの集団演舞、遠くの木にはオジロワシ、そして帰り際にはタンチョウのつがいまで現れてくれました。タンチョウの鳴き声や、雄雌の違い、本当にたくさんのことを教えていただきました。

 ガイドさん、堺出身の方だそうで、北海道に惚れて移住されてきたのだそうです。来しなに花咲線から見えた素晴らしい別寒辺牛湿原でのカヌーも凄いらしく、次回はそこもお願いしますと頼んできました。
 とっても素晴らしいガイドさんでした。絶対お勧めです。
 https://www.land-edge.com/
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2023 道東旅 #1 釧路~霧多布 [鉄道旅]

20230806 霧多布 (3).JPEG 根室本線の花咲線部分に以前から乗りたくって、今年はやっと実行してきました。決めたのが遅かったので、飛行機や宿取りが大変でしたが、とりあえずいつも通り飛行機から決めて計画していきました。関空からのPeachが一番安く、機内持ち込み荷物7kg一つのみという条件で、釧路まで飛びました。
 釧路空港から釧路駅までのエアポートリムジンには、「このバスは釧路駅でのJR線に接続していません。」との張り紙。この辺りのJR線は日に5本ほどなので、それに接続していないとなると、本当に焦ることになります。ヒヤヒヤしながらバスに乗っていましたが、乗車予定の花咲線には無事10分前に到着しました。
20230806 霧多布 (4).JPEG 釧路を出ると、すぐに人気のない平原に出て、ひたすら走っていきますが、厚岸から茶内間の別寒辺牛湿原を走る時に大感動。すごいところに線路が敷かれている。実際、少したくさん雨が降ると花咲線はすぐに運転見合わせになるそうです。
20230806 霧多布 (5).JPEG 浜中駅に到着。ここまで宿の方が迎えに来てくださるということでおりましたが、当日メール連絡すると、○○まで来てくださいとのこと。えっ!仕方なく誰も人が歩いていない道を歩き出すと、宿の方が車で来てくださり、バス運行のない日曜日であることを忘れていました!とのこと。ほっとしました。
 浜中はモンキーパンチさんの出身地だそうで、あちこちにルパンの一族の等身大看板があります。
 泊まった宿は霧多布里。https://kiritappuri.jimdofree.com/
東京から移住してこられたご夫婦の営む民宿です。SDGsにかなり高い意識のある方々で、色々話を聞かせていただきました。
20230806 霧多布 (8).JPEG
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20230807  霧多布 (2).JPEG 新鮮な魚介類中心で、とてもおいしい。お酒もとっても安く呑ませていただきました。霧多布辺りのことを色々聞かせてもらい、雨模様だった次の日の回り方もご指南くださいました。
 次の日は案の定小雨でしたが、朝食まで、浜の散歩に出かけました。道にはアスファルトの割れ目からノコギリ草がかわいい姿を見せています。ノコギリ草には3種類あるのだそうで、これはそのうち一番小さな葉の種類だそうです。
20230807  霧多布 (3).JPEG この辺の浜は、全国でも珍しい、自動車で走ることができる浜だそうで、遠くに見える霧多布岬を前に歩きます。オジロワシのつがいが、カラスのつがいと並んで岸壁に休んでいました。オジロワシは足で相手を掴まないと力が発揮できないのだそうで、カラスにいたずらされること多い出そうです。
 さてさて、宿に戻って参りました。この後カヌーを頼んでおいたガイドさんから中止の連絡が来ましたが、霧多布里のおじさんが、ネーチャーガイドしてもらうといいよ、ってアドバイスしてくださり、ガイドさんに伝えると、快諾。朝ご飯を食べてガイドさんの到着を待ちます。
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