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『ラ・ボエーム』 佐渡裕芸術関東プロデュースオペラ2022 [オペラ]

 2022年度の兵庫県立芸術劇場の佐渡さんのオペラはボエームでした。これは2020年度公演予定だったのですが、当時のイタリアはコロナでたくさんの人たちが亡くなる中、プロダクションがほぼイタリアで作られるこの公演は、他のオペラもどんどん中止になる中で、自然な流れで中止となっていくものでした。それが今回の公演につながっているわけです。
 兵庫県立芸術劇場のオペラは、どちらかというとよく知られている作品がかかり、ほぼどの公演も満席御礼と言ったものです。それもひとえにわかりやすい演出と、豪華豪華な作りが理由だと思います。今回のボエームも始まる前から期待にあふれるものでした。

IMG_1582.jpg 第一幕はセーヌ川にあると思われる船の中が4人の部屋という感じです。ミミは同じアパートというより、その船の停まっている前の建物に住んでいて、家主は同じのようです。この演出だと、まるでミミが早くからロドルフォのことを知っていて、狙っているかのようです。発想としては面白いですが、ミミが病気で気を失うことが少し辻褄が合わなくなります。まっ、でもイタリアオペラですから、難しいこと抜きで行きましょう。
 第二幕のカフェ・モミュスの場は、これはこれは豪華。幕が開くとカフェの前で、これでもかという人たちが舞台にいます。子供たちも含め、密にならないのか心配になってしまうほどでした。後半はカフェの中となり、色々な人たちが細かく動き、クリスマスの楽しさを巧く表現しています。ムゼッタの人気ぶりもよくわかる演出です。最後、鼓笛隊が現れて通り過ぎていくシーン、子供たちも含めて本当にゴージャス。
 第三幕は雪の降る城門のシーン。悲しい音楽によく合う作りです。

 キャストは2セットありますが、私は今回どちらも見に行ってきました。
 日本人がメインのセットは、私が一番感銘を受けたのはマルチェッロの高田智宏さんでした。顔の表情が台本によく沿っていて、顔を見ているだけで歌詞の内容がわかってきそうなくらいです。声もとてもよく練られた美しい声でした。ロドルフォの笛田博昭さんもとても巧いのですが、声量が他の人よりあるので、アンサンブルの時に少し浮いて聞こえてくるのが少し残念でした。ミミの砂川涼子さんは、最初少し硬く響いて残念でしたが、幕を往ごとに伸びやかな声になってこられて、さすがだなぁと思いました。ムゼッタだけがソフィア・ムチェドリシュヴィリさんというジョージア出身の方で、さすがによく伸びた声で、しかもムゼッタという色女を体現しているかのような人でした。第二幕では砂川さんより滑らかかつ艶めかしい歌を聴かせてくださり、本当にラッキーでした。コルリーネの平野和さんは第四幕の外套の歌ですごく大きな存在感を発揮されていました。日本のバス・バリトンは、体のこともあってか、どうしても浅めで弱く聞こえてくる感じがするのですが、とても美しく歌われていて感銘を受けました。
 もう一つのセットで一番よかった歌手もやはりマルチェッロで、Gustavo Castilloさんというベネズエラ出身の方でした。美しい声で、演技も人より大袈裟目でわかりやすくしてくださっていました。ロドルフォのRiccardo della Sciuccaさんは、少し声量が少なく、テノールって声が出しにくいのかなぁってイメージの歌い方でしたが、要所要所しっかり押さえておられるのはさすがイタリア人だなぁ。女声は、やはりこれもムゼッタのEva Taczさんがよく、第二幕などはお色気たっぷりで、ここまでやっていいのかなぁというサービスぶりでした。ミミのFrancesca Manzoさんは、ミミの声の高さは全然びくともしない余裕たっぷりの歌いっぷりでした。第二幕はやはりミミよりムゼッタの方が独断場のようで、ムゼッタのお二人には堪能させていただきました。

 今年は、日本人セットの公演は、一番前の列(実際にはA列に人は入れず、B列からだったのでB列が実質一番前の列)で、しかも佐渡さんのすぐ後ろだったので、もちろん歌手の演技も堪能しましたが、佐渡さんの唸ったり一緒に歌ったりする声、呼吸をする音、また歌舞伎のように見得を切る時の指揮法など、本当に佐渡さんを心まで堪能させていただきました。オペラってこうしてできるのだなぁと実感できる公演でした。
 来年は『ドン・ジョヴァンニ』。今から楽しみです。

 唯一の不平は、毎年必ず買っているTシャツが買えなかったこと。毎日販売枚数が決まっているとかで、劇場に着いたころにはもうその日分は売り切れている。二回目に行ったときに聞いたら、午前中には売り切れているとのこと。二時から始まる公演に午前中に西宮に着いているだなんて、普通はできません。スタッフは全員嬉しそうにそのTシャツを着ているし、劇場のあちこちに「Tシャツ好評発売中」ってポスターが、公演二時間前には売り切れているのに貼られている。本当にこれだけは後味悪かったです。

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