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『ドン・カルロ』(イタリア語4幕版) パリ・オペラ・バスティーユ [オペラ]

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 パリ滞在4日目にバスティーユのオペラ座にヴェルディのドン・カルロを見に行きました。パリに行くことを決めたのも、その時期に観たいオペラがあるということが大きな理由だったので、航空券を取るや否やオペラ座のサイトでオンライン予約をしました。同じ価格帯でももうすでにいい席は埋まっている状態でしたが、しばらくディスプレイとにらめっこして、その席を決めました。
 ドン・カルロは元来パリ・オペラ座のために書かれた作品で、勿論パリ・オペラ座で初演されているのですから、当然そちらでの演奏家と思っていましたが、ヴェルディが後で書き換えたイタリア語4幕版でした。サン・フスト修道院で始まる4幕版はあまり好きではないのですが、よく考えるとフランス語五幕版は十数年前にシャトレ座でアラーニャをタイトル役にしたすばらしい公演があり、DVDでも観られるので、オペラ座としてはイタリア語4幕版を選んだのかもしれません。
 
指揮 Carlo RIZZI
  Don Carlo:  Stefano SECCO
 Elizabetta:  Sondra RADVANOSKY
 Rodrigo:   Ludovic TEZIER
 Filippo II:   Giacomo PRESTIA
 Eboli:     Luciana D'Intino
 Il Grande Inquisitore: Victor von HALEM

 歌手は残念ながらほとんど知らない人ばかりでしたが、本当に楽しく聴き通せました。
 男性陣から見ると、カルロ役のSeccoは小さな人でしたが、とても満足のいく歌でした。演出の関係か、身のこなしがなよくって、本当に頼りないダメ息子って感じでした。低音はどの人もいいなぁと思いました。まずロドリーゴのTezierは堂々としていて朗々とした歌唱がとってもよく、カルロとの重唱も品があって良かったです。フィリッポのPrestiaは力まかせに歌ってしまうのではなく、3幕のアリアにしても奥の深い歌が印象的でした。大審問官のvon Halemは、フィリッポとの対比もあって少し低めで硬質な声の人でしたが、高齢で目が見えなくなっているという程年を取っていそうにない声でした。
 女性陣ではエリザベッタのRadvanoskyは重唱も大アリアも立派にやってのけ、堂々とした品格のある女王を演じられていたと思いますが、問題はエボリのD'Intinoで、ヴェールの歌からすでにこもった発声に力任せの歌が気に入らず、大好きな3幕のアリアも表題通りfataleな感じがしました。

 だだっ広い舞台に物は何もなく、時折床が下がって十字架になったり、仕切りの壁が出てくる程度の抽象的な舞台が少し残念でした。衣装はそれなりのものでしたが、このオペラをまったく知らない私の連れには、話が何が何だかわからなかったようです。
 演出はほとんど動きのないもので、オラトリオかと思うようなものでしたが、1幕1場終わりの友情の二重唱の後に二人で十字を切って祈る(ロドリーゴは新教のフランドル地方に傾倒しているはず)シーンだとか、ヴェールの歌はサラセンの物語なのに、女官みんながまるでフラメンコを踊るがごとくカスタネットを腰で打つ仕草を続けるなど、文化的にステレオタイプ的でげっそりするところもありました。山場の異端火刑の場も、客席側が燃えていることになっているのか、舞台上の人がみんなこちらを凝視しているのも、少し安易な処置かなぁって思ってしまいました。ワーグナーのオペラや演奏会形式のオペラじゃないんだし、それなりにお金も払ったのだから、もう少し華やかさが欲しかったと思います。元々華やかオペラなんだしね...。

 なんやかんや書きましたが、歌の点で言って、こうして主役の6人の半分以上は満足のいく歌唱だったんだし、オーケストラ伴奏で普段オペラ観ることだなんて私にはあまりないことなので、とっても嬉しかった数時間でした。

 バスティーユで夜遅く(10:30終演)うろうろするの嫌だったから、ホテルに帰って、前の日にランスで買ってきたシャンペンを開けて飲みました。安いのにコクがあっておいしかったです。さすが本場シャンパーニュ地方で薦められたものだけあるなって感じでした。

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