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シューマン 「詩人の恋」「リーダークライス」 EMI Classics [声楽曲]

odaoda-cad01.jpg 8月になって、家でじっくり仕事ができるようになりました。だからステレオの前に陣取って、日頃買うだけ買って聞いていないCDを片っ端からかけながら、コツコツと仕事をしています。一生懸命考えなければならない仕事の時は、自分の仕事机でコンピュータに向かいながらするのですが、8月にする仕事は、どちらかと言うと事務仕事や機械的な処理だけで、その日の気分によってガンガンとなる音楽や、おとなしく物悲しい音楽や、色々と楽しめます。
 日頃、あまり時間がないと、大好きなイタリア・オペラ中心に聞いてしまうのですが、今回はシューマンの歌曲全集を持ち出してきて聞きました。昨年のシューマン・イヤーで、歌曲集2つ、合唱曲集、室内楽集、ピアノ曲集と5つも全集を買ってしまったうちの一つです。シューマンを聴いたのは主に30代前半、もう10年以上も前のことです。その頃は本当にシューマンの歌曲が大好きで、そのデリケートな響きを楽しんでいたものです。当時はCD買うお金もあまりなかったから、フィッシャー・ディースカウの全集を何度も何度も繰り返して聞いていました。そうして聞き込んでいるうちに、フィッシャー・ディースカウの理知的で学術的な歌唱に、なんか堅苦しさを覚えてきたのだと思います。自然とイタリアの音楽に移行して行ったものです。
 この全集は、主に男声はオーラフ・ベーア(Br)で、最近のドイツ歌曲ではゲルハーヘルしか聞いていなかったので、こうしてじっくり聞くのは初めてです。でもこのベーアの歌唱が、どちらかと言うとフィッシャー・ディースカウの対極にあるような歌唱で、とても朗らかで、伸び伸びしているのです。声の響き自体が気持ちよく、伴奏もジェフリー・パーソンズだから安心で、ずんずんと聞き進めました。
 聞いていたのは「詩人の恋」と「リーダークライス24」と「リーダークライス39」ですが、ベーアの歌唱は、まったく身構えたところがなく、とても自然体です。多くの歌手が一番上の旋律を歌うところでも、この人は下の旋律を歌います。またどの曲も柔らかく、とても優しい響きがします。この3つの歌曲集では、実は私は「リーダークライス24」はあまり好きではありませんでした。フィッシャー・ディースカウだと、少し大仰に聞こえ、あまりに皮肉っぽく響く箇所が多かったからです。ベーアはもっと詩を率直に受け止め、その情感を大切に歌い出すところがありました。「詩人の恋」も、月並みですが実はヴンダリッヒのが一番好きだったりして、やはりこの歌集はテノールだなぁと思っていましたが、いやいや、このベーアの歌う「詩人の恋」も格別でした。

 今年の夏は節電節電でクーラーも入れず、未だに真空管4本を灯して音を出すアンプを使っていると、部屋の中が暑くてたまりませんが、窓を開けてステレオをかける時に楽しめる開放的な音と、こんな風にのんびりと音楽をかけながら仕事ができることは、私にはたまらない喜びです。これがずっと続けばいいのになぁ。

PS: とは言うもの、フィッシャー・ディースカウはドイツ歌曲となると神様です。事典的な人で、本当に素晴らしい人だと思います。ベーアみたいな朗らかな路線が聞けると、ドイツ歌曲もバラエティが広がって、今までのフィッシャー・ディースカウ一辺倒の時代とは違って、嬉しいなぁ、ってことなんです。フィッシャー・ディースカウの歌が嫌いだなんてことは決してありません。
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劇団四季 「オペラ座の怪人」 京都劇場 [ミュージカル]

odaoda.jpg 8月に入って、京都劇場の「オペラ座の怪人」を観てきました。前回大阪・ハービスエントで観た時、このミュージカルはもう劇団四季で観なくてもいいかなぁ、と思っていたのですが、会員情報誌が千秋楽だ千秋楽だって強く宣伝されているし、一度母親を連れてやってもいいかなぁと思い、京都のが終わる前に観に行ったわけです。

 舞台に向かって右側の真ん中通路側、前から3列目で、クリスティーンがこっちを向いて歌ってくれる回数が多かったのが嬉しい席でした。2幕最初の仮面舞踏会では、階段の上の方の人が見えなかったのが唯一の難点でした。

 何度も繰り返して聞くと、手のひらを返したようなクリスティーンの仕打ちや、ストーカーまがいのファントムの性格付けに、理性的には受け入れられなくなるような点も多いのですが、曲の美しさとストーリー展開、特に2幕でのたたみかけていくような展開は、本当にこのミュージカルの一番の魅力です。何度観てもワクワクしながら観てしまいます。
 ただ日本語訳にかなり問題があると思います。メロディーの美しさを損ねる字余りの言葉はまず大きな問題だと思います。確かに現代語に訳すのは大変だと思うのですが、できれば原曲のリズムにもう少しあった訳詞付けをして欲しかったです。また日本語でもいいのに英語やフランス語にしたりする点は、外国語に不慣れな年輩の人達、たとえば私の母などには、何を言っているのかわからないと思います。字で読むならそれなりに反芻して考えられるのですが、歌詞となると一瞬で終わってしまいます。「天使」「エンジェル」や「ムッシュ~」「~さん」の混在など、できれば日本語に統一した方がいいと思います。

 配役では、ラウルの中井智彦さんがなんせとってもうまく、本当に感激しました。母音もとても綺麗にそろえて歌っているし、声も綺麗だし、ハンサムだし、その若々しさもラウルに適切な配役です。ラウルは舞台でもCDでもあまり気に入った演奏がなかったので、今回は本当に嬉しかったです。劇団四季で歌うのはこれがデビューだとかで、そうには見えない堂々とした歌いっぷりは素晴らしかったです。
 クリスティーンもがんばっていましたが、クリスティーンって、大体だれがやってもあれくらいはしっかり歌ってくれるものだと思いました。
 問題はファントムで、声も男っぽくかっこいいし、中音以下もよく響く素敵な声なのですが、高音が出ない。高音がどれも割れているか叫んでいるか、悪いときは裏返ってしまうかで、その度に興醒めしてしまいました。たくさんのファンがいるみたいで、真ん中席の前の方の人達は、みんなウルウル目で見つめられていましたが、あの高音は、如何せん私はいただけません。1曲に必ず数回は出てくるのですから、他の何がよくっても、私は喝采というわけにはいきませんでした。前回大阪・ハービスエントで観た時のファントムも同じようにベテランの人だったと思いますが、この人も高音が出ず、最後は本当に聞きづらかった....。

 とは言うものの、合唱も素敵だし、立ち振る舞いも立派だし、やはり生で見るのはいいなぁと思った公演でした。
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