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クラウディオ・アッバード(アバド)追悼 Claudio Abbado [オペラ]

 2014年1月20日、イタリアの指揮者クラウディオ・アッバードが亡くなりました。
 自分のブログを書くのはとても久しぶりですが、アッバードが亡くなったことは少し衝撃ですし、インフルエンザで出勤禁止も今日で最後で、体はいたって普通なのに家を出ることができないので、今の気持ちを書きとどめておきたいと思いました。

 アッバードを知ったのは1981年のスカラ座が日本に来日した時です。もちろん高校生の私がその公演を観にいける訳でもなく、ましてオペラをそれまで観たことのない私には、NHKで放送されたテレビを観るだけでも十分新しい体験でした。その時はカルロス・クライバーも同行していて、作品もアッバードが「シモン・ボッカネグラ」「セヴィリアの理髪師」、クライバーが「オテッロ」「ボエーム」で、オペラ初心者で若輩者の私には、悲劇かつ有名なものにより関心が高かったので、クライバーの2作品の方がずっと感銘を受けていました。アッバードの2作品は観たもののもう一つよくわからないというのが正直なところでした。
 しかしそれからなけなしのお小遣いで、年に2つというペースで少しずつオペラLP(当時新譜は一枚2800円、廉価版で一番安いものでも一枚1500円)を買い集めて行くと、アッバードに対する見方が変わっていきます。初めてアッバードのLPを買ったのは高校3年生になった時で、「シモン・ボッカネグラ」でした。当時あまり有名でないオペラだったけど、来日公演の時にテレビで観ているし、名盤の誉れ高いLPだったので買おうと思いました。なんせ家に聞くことができる他の音源がなかったので、このオペラはどれだけ聴いたことでしょう。今では一番好きなオペラの1つです。その後アッバードのレコードは、できればスカラ座と共演しているのが欲しかったということもあって、「マクベス」「仮面舞踏会」「レクイエム」と立て続けに買って聞き込みました。アッバード熱が自分の中でも高まっていたので無理してでも新譜も買いたいと思いましたが、ちょうどその当時CDが売られ出した頃でオペラはLPよりもずっと高かったので買えず、レコード芸術のレコード評などを一生懸命読んでその曲の代表的な録音(「アイーダ」は旧カラヤン盤、「ドン・カルロス」は新サンティーニ盤という風に)しか買えず、アッバード盤は諦めていました。それでも、本当によくレコードを聞き込んだ時期だったので、私のオペラ基礎の大半はこのアッバードに仕込んでいただいたということになります。

 「シモン・ボッカネグラ」はもう30年以上聞いていることになります。最近ドミンゴがバリトンの主役を歌い出し、このタイトル・ロールも歌っているのでそのDVDを買って観たりしていますが、やはりこのアッバードの演奏とは比べものにならず、忘れられません。今では、プロローグと第3幕にあるカップッチルリとギャウロフのデュエットなど、本当に心にしみて大好きですが、30年間変わらず大好きなのが第2幕のフレーニとカップッチルリの2重唱です。歌手もさることながら、アバドのオーケストラの盛り上げ方がとても上手く、何度聞いても胸が熱くなります。ライブ映像などで観るとあまりどれもうまく聞こえない幕切れのコンチェルタートも、フレーニの上手さも相まって本当に感動的で、未だに聞くたびに涙が出ます。


 「仮面舞踏会」には当時まだ「これ」とされる録音がなく、モノラル録音を敬遠していた私にはカラスのLPを買おうと思うこともなかったので、当時新譜だったアッバード盤を買いました。LPジャケットはこれとは違って、ドミンゴが座っている全身を正面から撮ったものでした。「シモン」や「マクベス」とは違い、どこか乾いた音がする録音でしたが、上手いドミンゴと若々しいリッチャレルリ、それにとってもノーブルなブルゾンと、これも本当に聞き込んだ録音です。リッチャレルリの2つのソロ(2幕の大アリアの盛り上げ方、3幕のロマンツァの演歌調のしっとり感)を聞いても、アッバードって上手いなぁと思っていました。

 後々、CDを買う余裕も出てくる歳になっても、その頃の志向が大きく影響し、イタリア、それもヴェルディとプッチーニを中心に聴いていましたので、アッバードのロッシーニを買うのは随分後で、こ10年くらい前のことになりますが、オーケストラ曲自体にあまり関心がなかった私には、他のアッバードの録音はあまり興味がなかったかもしれません。唯一、ブラームスの交響曲全集が欲しい時、北ドイツの雰囲気をあまり好まない私は、「よく歌う演奏」という触れ込みだったアッバード+ベルリン・フィルの当時新譜を買いました。これは未だに好きで、たくさんある他の名演に気が移ることなく、よく聞いています。特に1番の第2楽章が好きで、他の指揮者のだとがっかりしてしまった覚えがあります。


 ヴェルディのレクイエムは、金のイエスの十字架磔刑像の衝撃的なジャケットのLPを大学生の時に買って聞きましたが、当時所属していた吹奏楽の仲間から、よくそんな退屈そうな音楽聴くなぁ、と言われたのを覚えています。レコード針を下ろすと、じりじりという針の音の中にかすかに弦の下降音型が出てきて、合唱のつぶやきが出てくる始まり、いつも息をのんで緊張しながら聞いていました。CDに最初の弱音から静寂の中にしっかり聞こえてくるので、その緊張感も薄らいでしましたが、少し荒削りの合唱にとっても巧いソロ4人がお気に入りで長く聞いています。その後、ウィーン・フィル盤もベルリン・フィル盤も買って聞きましたが、リベラメがどうしてもスカラ盤の呪縛から逃げられず、しかもスカラ盤のジャケットの美しさにかなうことなく、2・3回聴いてお蔵入りしてしまいました。しかしこの曲がこれほどテレビのバラエティ番組で使われるようになるとは思いませんでした。(ちょっと曲の内容を勘違いしてるかとも思いますが、みんなが知ってくれるのはいいことでしょう。)


 私とアッバードとの関わりを徒然に書かせてもらいました。若い頃の溌剌としたかっこいい姿ばかりが思い起こされます。胃がんで亡くなったと聞き、きっと大変な思いをされたことだろうと思います。あらゆる痛みや苦しみから解放され、彼の魂が主のもとで永遠の安息を得られますようお祈り申し上げます。

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