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ムーティ指揮 ローマ歌劇場東京公演 5月27日 『シモン・ボッカネグラ』 Simon Boccanegra by Maestro Muti in Tokyo [オペラ]

20140527a.jpg 一大決心をして、大枚をはたいて東京まで行ってムーティのオペラを観てきました。ああ、よかった。今までの引越公演の中では一番良かった。感動も覚めやらず、その感想をしたためないではいられないので、今帰宅してすぐに書いています。

ヴェルディ 『シモン・ボッカネグラ』
 プロローグと第3幕のメロドラマ
 指揮: Riccardo Muti
 Simon Boccanegra-George Petean (br)
 Maria (Amelia) -Eleonora Buratto (sop)
 Gabriele-Francesco Meli (ten)
 Fiesco-Dmitry Beloselskiy (bs)
 Paolo-Marco Caria (br)
 ローマ歌劇場管弦楽団・合唱団

 私のもう一つのお目当てだったFrittoliが直前でキャンセル(もうFrittoliは3回もキャンセルされているのできっと縁がないのでしょう)。でもやはり第一はムーティです。CDを聞いてもあれだけパワフルな音楽を引き出す人、オペラにおける指揮者中心主義を貫いている人ですし、キャストだってすべて彼のお眼鏡に適っているはず。指揮者中心で観る演目を決めるのは初めて。
 
 ムーティの音楽は、もうこれ文句なしです。痒いところに手が届くって感じです。オケはそれを100%生かせているのかというと、そうでもなさそうなのですが、ムーティの指揮を観ているとどうしたいのか本当によくわかるものでした。ただの歌の伴奏という感じでは決してありません。ムーティは観客が拍手する箇所も考えてあるようで、曲を無理につないでいくと言うことはありませんでした。
 歌手で一番感激したのはGabrieleのMeliです。スタイリッシュで音質が乱れない。しかも感情がしっかり表現されていてこちらまで伝わってくるし、それに何より、声に無理がないのに本当によく聞こえる。彼が歌う度に感動してしまいました。
 Petean(Simon)はとっても明るい声のハイ・バリトンで、とても誠実に歌っていました。時々声が疲れて聞こえる時があるのですが、本当によく歌っていました。
 Beloselskiy(Fiesco)もとても丁寧な歌で、日本ではあまり聴けることのないしっかりと響くバスで、彼の歌もどれもとても楽しみでした。Simonとの2重唱も天国にいるような気分で聴くことができました。
 Paolo役が巧いと善悪のコントラストがはっきりして、このオペラは本当に味が出てくると思うのですが、Cariaは歌も芝居もとても巧く、物語をしっかりとしめてくれていました。
 Buratto(Maria/Amelia)は、とても声が綺麗なのですが、息が比較的短くて変な箇所での息継ぎが気になったのと、高音を出してアンサンブルをきめなければいけない時、とってもよくがんばって出そうとするため音程が上ずって聞こえてきて、私には少し興醒めでした。これがFrittoliだったらどんなにいいことかとは思いましたが、今更ながらのお話しです。
 それとオペラグラスで観ていると、どの人もとっても若い!やっぱし若い歌手って見た目はとってもいいですよね。
 他の人のブログを見ていると、合唱があまり巧くないと書かれていましたが、私にはとてもよく聞こえました。パンチがあるし、しっかり指揮者に統率されているという感じでした。

20140527b.jpg ムーティが颯爽と現れて、大好きな第1曲が始まります。幕が開くと舞台はジェノヴァの聖ロレンツィオ教会を彷彿させる黒と白の大きな建物の中です。昨年の夏にジェノヴァに行ったところだったので、見慣れた場所が出て来てとても嬉しかったです。イタリアの歌声がホール一杯に響き渡ります。Fiescoのアリア、特に後半、舞台裏からのアカペラ・コーラスを伴う部分、生で聴ける喜びを思わず噛みしめてしまいました。合唱もとっても巧い。FiescoとSimonのデュエットも格好いい!
 プロローグと第1幕は25年離れているわけですが、幕間休憩なしで、約5分くらいの待ち時間で始まります。大好きなAmeliaのロマンツァ。Gabrieleの声が舞台裏から聞こえてきて、Ameliaも待ち焦がれていたのでしょうが、あんまりMeliがスタイリッシュな声なので、私も期待で胸が高鳴りました。海のほとりの大邸宅のテラスという設定のようですが、大きな鎖が家の上からぶら下がっていました。このオペラで一番好きなナンバー、SimonとAmeliaのデュエットもアングリと口を開けて聞き入ってしまいました。Ameliaの最後の"Padre"という高音はもう少し力が抜けた音で聞きたかったですが...。その後のPaoloとPietroの短いパッセージは、アッバードのCDだととっても小気味よいテンポで進むのですが、ムーティは案外ゆっくりでした。
 第1幕フィナーレの場面転換も約5分くらい待ちます。本当にたくさんの人達が舞台上に現れて、音楽も否応なしに劇的に盛り上がります。あんまり人が多く、舞台からオケピに落ちないかなぁと思ってしまいました。最後の大コンチェルタートでも、もちろんSopranoの高音は目立ちますが、Meliの声がいつもしっかり聞こえてくるのには感銘を受けました。
 第2幕にはGabrieleのアリアがありますが、今回のアリア後の拍手で一番長かったのではないでしょうか。安定した音質とスタイリッシュな歌い回し、本当に感動しました。Simon、Amelia、Gabrieleの三重唱も緊張感のあるもので、本当に耳の保養となる響きを楽しめました。
 最終幕は、聞く前から思い入れが強すぎて、感動感動。どうか終わってしまわないでと祈るばかりでした。Paoloが婚礼の合唱に伴われて歌うソロは、Cariaの演技力も相まって悲劇的で良かった。Simonのソロも格好いいし、SimonとFiescoのデュエットは本当に涙ものでした。そして最後の大コンチェルタート。Simonの最期の場面もとても人間的でよかったです。

 1月にアッバードが亡くなった時にも書きましたが、私がオペラを初めて聴いたのは高校2年生の時にスカラ座が引越公演にやってきて、その公演をNHK放送で見た時からです。その時アッバードが振ったのがこの『シモン』。それから遅ればせながらLPを買って聴き、それ以来ずっと大好きなオペラです。それからガヴァツェーニ指揮のCDやら、アッバードのパリ・オペラ座ライブを買ったりしましたが、そのLPが私の『シモン』原体験で、ドミンゴがタイトル・ロールをやったので興味本位にメト版、ロイヤルオペラ版、スカラ版の3種を買いましたが、もうアッバードのLPが私の中で不動の地位を占めていました。でも今回のようにソリストがハイレベルで、指揮者が隅々まで統率をとった演奏となると、やはりただものではありませんでした。
 水曜の夕方で値段が値段なのに、席はほぼ満席。この気持ち、本当によくわかるし、みんな私と同じように満足しきって帰って行かれたことだと思います。そうそう、テノールのSabbatiniも客席で聞いておられました。

 オペラが終わった後も興奮はいつまでも覚めやりませんでした。
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