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マスネー『ウェルテル』への思い [オペラ]

 今日はクリスマス・イブ。最近暗いこの世の中も、クリスマス・イブの今日は、さすがに特設ケーキ売り場があちこち出てたり、ケンタッキー買って帰っていくお母さんがちらほらいたりして、ちょっと楽しそうです。独り者の私は、夕方、教会のミサには行きますが、さしてすることもなく、中華屋で定食でも食べようと思っているくらいです。
IMG_2335.jpeg 私もそれほど“明るい”クリスマスというわけではありませんが、もっと暗いクリスマスになる主人公がいるオペラのお話です。マスネーの『ウェルテル』。3幕にあるウェルテルのアリア "Pourquoi me reveiller" に惹かれて、ここ数週間ヘビーローテーションで聞いています。元々持っていたのはAlagna盤ですが、今回の熱でCarrerasとvon StadeのCDと、FlorezのBlu-rayを手に入れました。
 12月はとても忙しいので、前曲を聞く時間は到底持てませんが、今お気に入りのアリアがある3幕、それに続く4幕を仕事のBGMでかけて聞きました。BGMなんで、あんまり本腰を入れて聴いているわけではありませんが、それなりに感想を。

 なにせオケ伴奏が分厚くって悲劇悲劇しています。マスネーはフランス一のワグネリアーナーということですが、私にはプッチーニに近く感じるくらいです。二人とも『マノン』書いてるくらいだから、同じ時代の人なのでしょうが...。
 Alagnaはとても英雄ぽくって、しかも本当に強いだけの英雄ではなく、陰がある英雄ぶりがこの役にとても合うなぁと思います。私的にあまり高く評価できないGheorghiuの歌もとってもしっくり聞こえます。まだご夫婦だった頃の録音なのでしょうか。息も合っています。

https://youtu.be/EWvbaw4IS2U?si=9woN1BpU9YyiNdmx
 YouTube見て、このFlorezの歌は情感たっぷりで気に入って、映像のパッケージを探すと出てきたのがチューリッヒでの公演映像。舞台が狭く狭く設定してあって、ウェルテルの置かれた閉塞感は伝わってくるのですが、舞台としては少しなぁ。Florez、とっても巧いのですが、こんな歌手だったのかなぁと一息。Rossiniが凄かったけど、こんな重い歌を歌うのだなぁ。Sharlotte役が私にはもう一つで、もうウェルテル飽きてきたかなぁ。
 と思った矢先に届いたのがCarrerasとvon Stade盤。Carrerasのひたむきな歌に惹かれてしばし聴いてしまいました。von Stadeの素朴な歌い方もとてもあってる。もう一度これを中心に聴いてみたいと思っています。

 そもそも、Pourquoi me réveillerのアリア、どうしてこうもできがいいのかなぁ、と図書館でヴォーカルスコア借りて見てみると、歌と伴奏に少しずれがあるところが味噌なのかなぁ。
 歌い出しの旋律が、先にオケ伴奏に不安定な形で現れ、そのままアリアとなります。ほぼほぼハープのアルペジオの上で歌われていくのですが、山場となるところでオケ伴奏が先に旋律を奏でると、それを追っかけてテノールの旋律が就いていく、オケの強音のトゥッティの前にはテノールの旋律は先走ってAisのアクートとなってる。第2節は、それこそ歌い出しの旋律を先にオケが奏でてしまい、オケの対旋律に煽られながら、山場でまた第一節のようにテノールの旋律が追っかけて先走りのAisのアクートにオケの強音トゥッティ。伴奏とテノールのずれでうまく主人公の心の揺れを表しているのでしょうね。聴いているこちらの気持ちが煽られる煽られる。

 ということで私はクリスマス・イブのミサに出かけてきます。ウェルテルのようにピストル自殺は決していたしません。 
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