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映画『ゴジラ-1.0』 [映画]

IMAXで『ゴジラ -1.0』を観てきました。ネタバレしない程度に書きます。

 勿論ゴジラが主体なのですが、今回のゴジラは、戦争末期から終戦直後の時代を生きる人々の人間ドラマが描かれていて、とも面白かったです。
 IMAXで観て一番の感想は、ゴジラが本当に怖かったこと。こんなにゴジラって怖かったのかなぁと今更ながら思うほどでした。シン・ゴジラの時もそうだったのだと思うけど、本当にゴジラって生物そのもので、怒り以外の感情は持ち合わせていないのかと思うほどでした。
 いただけないのは、本編が始まる前に3本程宣伝があって、それがあまりにエグくて、顔を背けていたし、音も厭でした。あれはちょっと拷問に近い。
 ゴジラに纏わるお話というと、いつもとパターンは同じで、急に東京がゴジラに襲われるから、どうやって退治するかに尽きます。でもそれ以上に今回は人間ドラマがあり、戦争を生き延びてきて、みんなが自分の生きる意味を探し求めるというところに焦点が当たっています。それがかったるいという評もあるようですが、私のように齢を重ねると、その思いや周りの人たちに対するどうにもできない思いが胸に響き、何度も涙してしまいました。
 今回はそれに音楽の扱いもよかったと思います。ゴジラというと初代ゴジラの伊福部さんの音楽がガンガンなるのが常ですが、今回の映画は、最後の作戦実行の時だけしか使われません。それがとっても効果があった気がします。
 音楽に限らず、初代ゴジラのオマージュはそこかしこに見られます。ゴジラが歩く音や、鉄道やジャーナリストのシーンもそうでした。面白いのは初代ゴジラ制作時より、時代設定は古いはずですが、映像で表現されている描写はそうではないようでした。
 神木隆之介がとても巧いなぁと思いました。こんなに表情を巧く出すのだなぁ。安藤サクラ、いつもいつも味のある演技で嬉しいです。吉岡秀隆は、なんだかなぁ、長く俳優してはるのに、素人みたいだなぁ。もしくはそれが演技なのかなぁ。
 帰ってきて人の評を見ると、よく言う人と悪く言う人と。私は感銘を受けて帰ってきた口です。
https://youtu.be/x7ythIm0834?si=9jMVyVWcNpUJCePK
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シュトラウス『こうもり』 2023.11.19 びわ湖ホール公演 [オペラ]

 朝7:15に出勤して退勤が20:00より早まることがない毎日、今日のオペラもほとんど気にできていませんでしたが、さて明日はオペラと思い、フライヤーを見てびっくり。凄い布陣。
fledermaus1.jpg 満を持して遅刻しないように家を出ました。席はいつもの大好きな場所。
 この公演の一番の見所は、舞台を明治の日本に移し、漫談風の解説付きで上演です。セリフは日本語で歌唱はドイツ語でした。舞台装置は畳が八枚を色々動かして作っていくという仕掛けでした。
 演出が野村萬斎なので、それはそれでよいし、とても面白かったのも事実ですが、この『こうもり』という喜歌劇のシャンペンの泡のようなイメージとどうしても結びつかないので、音楽がしっくりと入ってこない。美しい着物姿、明治風の洋服もきれいですが、なんせ音楽が入ってこない。もちろんポルカなどの踊りはないですし、ガラもありません。
 歌手的には、ファルケの大西宇宙さんがダントツに巧かったです。つやのある声で、歌唱に力みがない。なのに堂々とした歌いっぷりに魅せられました。前回の兵庫の『ドン・ジョヴァンニ』題名役から気に入っていましたが、今回はその思いがもう一つ奥に進みました。歌だけではなくセリフ回しもとても巧い。これからも続けて聴いていきたい歌手です。
 オルロフスキーの藤木大地さんは、折角の男前が顔白塗りで少し残念。でもセリフからファルセットで、安定感あるカウンターテナーパートが嬉しかったです。ただカウンターテナーはあまり強い声を出せないのか、オーケストラや共演者や合唱の声に埋もれてしまうことも多いので、少し気の毒でした。
 ロザリンデの森谷真理さん、あれだけ地声でセリフしゃべっての歌唱はしんどかったのではないかと思うのですが、よく伸びる柔らかい声がよかったです。チャールダッシュのソロもかっこ良かったし、なにせ演技が堂に入っていました。
 アルフレードの与儀巧さん、かなりアドリブも入れて、よく頑張られていました。歌もとてもよかったです。
 アデーレの幸田浩子さんは私には少し硬く響きました。声のコントラスト的に森谷さんとはよく取れているのですが、硬質な響きが聴いていて少し辛かったです。
 アイゼンシュタインの福井敬さんは、最初福井さんとは思えない歌唱だったのですが、それもそのはず、アイゼンシュタインは確かバリトンだったような。美しく響く中音域は、テノールで主役を張ってこられた彼の声とは違う感じで、とてもいいなぁと思いました。ただ大西さんと二人で歌うと、大西さんのつやのある若い声とは違うなぁと思ってしまいましたが。
fledermaus2.jpg 桂米團治さん、序曲前の講釈があまりに長いので、このまま演奏中もこれが続くのかと思いましたが、始まるとそうでもなく、うまく短く解説を入れられていくので、それは楽しかったです。
 しかし、演出的に、今日は面白かったですが、このように日本風に置き換えたものが続くと、シャンペンの泡からはほど遠い響きに聞こえ、退屈してしまうかもしれません。
 阪哲朗の指揮、びわ湖のオペラは初めてだと思いますが、しつこくブーイングする方がおられました。私はオケに対してはそこまでの耳も持ち合わせてないので、傍観していました。
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ベルリーニ『ノルマ』 ボローニャ歌劇場・びわ湖ホール公演 2023年11月11日 [オペラ]

 久しぶりのボローニャ歌劇場引っ越し公演です。最近は日本の歌手の皆さんも聴き応えがあるので、わざわざ引っ越し公演もなぁとは思いましたが、イタリアのオペラ・ハウスの演奏は、日本では聴くことができないカラッとした響きが魅力的なので、ちょっと値段がお高いのですが、思い切って久しぶりに行くことにしました。
スキャン_20231113.jpg
 名前を知ってる歌手は、恥ずかしながらテノールのバルガスだけでした。ガンガンと歌うというより、丁寧に響かせて歌っている感じがしました。プロフィールを見るともう60を超えているそうですが、そうとは思わせない歌いぶりでした。アダルジーザの歌詞にある「凜々しいお姿にため息をつき、魅せられてしまいました」とはちょっと違う体型をされていましたが、それはそれはそれでご愛敬。
 ノルマを歌ったドットは、一幕では声が平板で、一生懸命響かせようとしているのか、少し無理があるのではないかと思う歌い方でした。初めて登場する場面もかなり強い声で歌われるので、少し驚いてしまいました。続くCasta Divaは、倍音で声が美し響いているというより、頑張って歌っている印象が強く、息の長い美しい旋律を楽しむことは私には少し難しかったです。2幕になると、声も随分でるようになってきたようで、安心して聴けるのですが、後半がヴェリズモのように激しい歌い方になっていき、聴いてる私も劇に引き込まれてはいくのですが、様式的にはどうなのかなぁと疑念を持ってしまいました。
 アダルジーザは日本人の脇園さんで、この人が一番巧かった気がします。テンポをうまく揺らしながら、無理のない声で歌い継がれていきます。かといって主役を喰ってしまうような歌ではありません。あまり配役を知らずに行ったので、最初はずっとイタリア人と思っていたほどでした。
 大好きな2幕始めのノルマとアダルジーザの二重唱は、前半が少し早いテンポで、もう少し二人の声を楽しませてもらいたいと思いました。後半のカヴァレッタ、省略もなくリピート部分が歌われたのですが、あの友情の歌の後ろで、3組の男たちが戦っている様子が描かれ、少し視覚的に邪魔だし、音楽にも合っていない演出に疑問がありました。
 オロヴェーゾのコンチェッティ、とてもよかったですが、2幕のソロで、会場はあまりノルマというオペラをよく知らなかったからなのか(勿論私もそれほどよく知りません)、拍手がまばらだったのが気の毒でした。
 さすがイタリアのオペラ劇場だなぁと思ったのが、テンポが揺れるてもたじろがないし、歌手もそれなりに揺らしてくるけど、しっかり指揮者が寄り添って伴奏をしてくれる。これってすごいなぁ。それにまるで歌舞伎かと思わせる見得を切る演奏も手慣れたものでした。だから聴いている方はわくわく感がありました。
 演出は細かくされているのですが、舞台装置がほぼなく、人だけが動くのですが、なにせ合唱が素晴らしいから、それだけでも楽しめました。ただ、火あぶりの刑とあれだけ繰り返されて言われるのに、結局ノルマがポルリオーネを短剣で刺して、すぐ後に自分も刺して自害するっていうのは、ちょっとどうかなぁと思ってしまいましたが、歌が中心だからこの際いいかなぁ。
 最後に、ノルマのストーリーは、少しついて行けない。勿論、オペラは「こんなことありへんわ」ってストーリーだらけなのですが、ジェンダー的にも、なんかサラッと、何これ?っていう言葉・行動がなされる。歌の旋律美がなければ、あまり感情移入しにくい内容だなぁと思いました。

 でもでも、やっぱし行って本当によかったです。
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ヴェルディ『アイーダ』終曲 [オペラ]

IMG_2262.jpeg 最近はあまり時間がなく、オペラの全曲を聴き通すだけの余裕がありません。それで考え出したのが、オペラの大好きな曲(重唱やコンチェルタートが中心)を聞き比べていくことでした。
 これで第二弾になりますが、今回はAïda終曲です。初めてこのオペラを聴いたときからこの終曲が好きで、私の葬式の時には流してもらいたいと思うほどでした。初めて聴いたのはKarajan, Tebaldi, Bergonzi, Simionato, Wiener Philharmoniker盤で、未だにこれが私のAïdaのベスト演奏ですが、その後、CDが安くなったこともあり、色々なAïdaを買い集めるだけ集めて、ほとんどまともに聴いてこなかったから、今回は目からうろこのいい演奏もたくさんでした。

 基本的に1960年代辺りのDeccaの録音は、Sonic Stageの音場の取り方が好きです。上記Karajan旧盤と、Solti指揮、Price, Vickers, Gorr, Opera di Roma盤は、どちらも最初は主役二人にスポットライトが当たっている感じなのですが、合唱やAmnerisが登場すると、スーッと二人の音が下に降りていき、残響があるような感じに、そこからAmnerisにスポットライトがあたり、その後方に合唱が聞こえるようになります。主役二人だけ多めにエコーが架けられ、下にいるという響き方をします。こうすることによって主役二人の天への旅立ちと、Amnerisの悲しみに焦点が当たる気がします。Karajan旧盤が最高と思っていましたが、Solti盤もとてもしめやかに終わっていく様子がとても気に入りました。と言ってもAmnerisの最後の祈りはSimionatoに尽きますが...。
 Karajan新盤、Muti盤、Abbado盤はどれも主役二人が常に前の真ん中にいて、Amnerisと合唱は上、もしくは奥から聞こえてくる感じで、あくまで主役二人に焦点があたっています。それはそれでよいのですが、最後はAmnerisと合唱だけになるので、最後まで奥まった音で終わっていく感じがあります。

 歌手的には、Aïdaは私的にはダントツにTebaldiです。こういった幾分硬派な役柄はTebaldiがとても合うと思っています。Freniは美しい声で本当に安定感のある歌唱ですが、Puccini的な可憐な主役のイメージがつきまといます。Caballéは優雅に聞こえすぎる感じがしますし、私は彼女の中音より低い声があまり好きではありません。Priceが太く強い声で、Tebaldiとはちょっと違うけど、とても巧いし、今回いいなぁと思いました。Ricciarelliは高音でsotto voceを使おうとするためか、ここでは少しヒステリックに響く感じがします。 
 RadamésはBergonziの滑らかで艶やかな声が好きですが、Carrerasの誠実で英雄らしき直情的な歌い回しがとても好感が持てます。DomingoはMuti盤では、録音の関係か、強音になるとオケとAïdaに声をかき消されてしまいます。Abbado盤ではとてもよく伸びる声に魅せられますが、少し声が甘すぎるのではないかなぁ。死を前にして少し悲壮感がない気もします。Vickersは、いくつかCD全曲盤を持っているのですが、あまり聴いておらず、声も聞き慣れない感じでした。他の歌手に比べると太くマッチョな声で、将軍によく会う声だなぁと思いました。
 AmnerisはSimionato の優しい追悼の気持ちが伝わる声が一番です。Gorrはなんか少し短い感じがするのはなぜでしょう。Cossottoはまだまだ勢力のある強い女性が垣間見られます。次の人を探そうとっていうことかなぁ…。Baltsaはデュエットに絡む部分がほぼ聞こえません。まるで天上にでもいるような音場の取り方はどうなんだろう。
 録音で言うと、私の持ってるCDででは、EMIの2つが、Volano al raggio dell’eterno dì.が響きすぎて割れる寸前なのがいただけません。(やっぱしEMIの録音は好きではない…。)

 こんな聴き方をしてみると、テンポの取り方、音場のあり方、アンサンブルの捉え方など、深まって行って面白いですし、好きなオペラの好きな箇所なので、飽きることなくじっくり聞けます。続けてアップしていきたいです。
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