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ボローニャ歌劇場 ファン・ディエーゴ・フローレス キャンセル [オペラ]

「あのマリア・カラスの生の舞台を同時代に生きて享受できたオペラファンは人類史的幸運であったが、それ以来のオペラ史的至福と云えば、100年に一人のテノール、フローレスを今聴くことができることと言っても過言ではない。ハイCよりも高い音が何度も出てきて、オペラ史上最高音をテノールに要求する、本場イタリアでも上演至難な「清教徒」を遂にフローレスで、日本で実現!ランカトーレ、ガザーレ等、当代の純イタリアン・ベストメンバーの瑞々しい声を揃え、ブルーを基調とした美しい新演出の装置も見逃せない。オペラ愛好家のあなたなら、これを聴かずして何を聴く!!」

「オペラ史上の奇跡!100年に一人のテノール、フローレスによる超高音オペラ。マリア・カラス以来の歴史的な至福の体験、これを聴き逃したらオペラファン一生の悔い・・・」
(ボローニャ歌劇場びわ湖公演チラシより)

S席54,000円、A席46,000円、B席39,000円、 
C席32,000円、D席25,000円、E席17,000円

 フローレスは大好きなテノール。CDもDVDもたくさん買い込んで聴いてきました。そのフローレスが関西に来ると聴いて、なんとしてでもチケットを買いたかった。財布と相談して、32,000円で最上階の後ろから2列目の席を、昨年12月に、チケット争奪選で手に入れました。この席からは小さいだろうなぁ、でも声はよく聞こえるはず。32,000円でも分不相応。これ以上の出費はできません。
 同じ劇場の「カルメン」のカウフマンは、メトロポリタンの引っ越し公演の時に、「放射能が怖いから」来なかったから、どうせ今回も来ないだろうと思っていたら、案の定キャンセル。今回のキャンセルは「私自身、日本に行くことを非常に楽しみにしており、皆様にまずお伝えしたいことは、この数か月間、日本の皆様が直面している状況を理由にお伺いできなくなったのではありません。(本人による謝罪文より。ボローニャ歌劇場メイン・ページ)」だそう。Heldentenorを歌う現在の状況に腹立ちながらも、フローレスは何の発表もしていないから、さすがフローレスだと思っていました。
 リチートラの訃報を知り、凄くショックを受けながらも、ボローニャの「エルナーニ」の代役は誰になるのか調べようとボローニャのメインページを見てみると、フローレスのキャンセルの情報が載っていました。目を疑いました。しかも理由が理由です。

「フローレスからのメッセージ
 親愛なる日本の友人の皆さま、ファンの皆さまへ
 悲しいことに、病気を理由に9月のボローニャ歌劇場公演における「清教徒」に出演できなくなったことをお知らせしなくてはなりません。海水を飲みこみ激しく咳込んだ時に声帯の開口部分の細い血管を傷つけてしまいました。深刻な病状というわけではありませんが、この状態では歌うことが出来ません。しばらくの間休養が必要です。久々に日本を訪れることを待ち遠しく思っていました。そして、その地で大切なファンの皆さん、友人の皆さんに再び会えることも。一方で、私にとって大変特別なオペラである「清教徒」を歌うことが楽しみでした。
 これまで何度も日本を訪れました。私の心に残っているのは美しい思い出ばかりです。そして、再び日本を訪れる機会が来ることを待ち遠しく思っています。
 皆様にはご理解頂けますと幸いです。
 フアン・ディエゴ・フローレス」

 この人は日本であれだけの内容の宣伝をされていたのにも関わらず、上演ギリギリのこの時期になり、キャンセルです。プロフェッショナル失格ではないですか。
 本当は放射能が怖かったならもっと早い時期にそう言えばいいだろうし、主催者側もあれだけの宣伝を打っているのだから、このオペラの公演は中止して払い戻せばいいのではないでしょうか。
 しかも代役は、今まで名前も聞いたことのないテノールです。まだ劇場メインページにはその人の詳しい情報は載っていませんが、今日主催者側から送られてきたお詫び状にはこうあります。

「これに伴い、アルトゥーロ役は、セルソ・アルベロが演じることが決定しました。アルベロは2009年にボローニャ歌劇場「清教徒」のアルトゥーロ約として、フローレスと交代で出演しており、ベッリーニのオペラの現在最高の演奏家の人です。」

 私たちはボローニャにいてこのオペラを観るわけでもなく、交代で出演しているからといって、フローレスと同じ高額な代金を払って観る理由がないのですが...。大体、宣伝で言っていたフローレスのことはどこでどう代償を払ってくれるのでしょう。これでは納得がいきません。ちなみに今日掲載されている宣伝にはこうあります。

「イタリア、若手コロラトゥーラ・ソプラノNo.1のデジレ・ランカトーレによる「清教徒」最大の見せ場:「狂乱の場」。ここでランカトーレが繰り広げるはずの、前代未聞の、壮絶なカデンツァ(即興歌唱)は必聴!
 若きランカトーレの「清教徒」デビューは、2008年9月シチリア島パレルモ、マッシモ大劇場であったが、第二幕「狂乱の場」の場での、彼女の独自の、「カデンツァ」は、誰もが耳を疑うような、上記諸先輩からも聞いたことのない、度肝を抜くような、壮絶なカデンツァ(即興)であった。人呼んでこれを「ラントーレ・カデンツァ」と云う。ピエラッリがオリジナルの演出を手掛けた、ブルーを基調とした美しい装置も絶対に見逃せない。」

 確かにランカトーレは巧いです。フローレスとランカトーレの組み合わせをどんなに楽しみにしていたことか。しかし、最初の宣伝ではランカトーレについて、ここまで書いていなかったのに、今はこの宣伝で、完全にランカトーレ売りに換わってしまっています。それほど代役のテノールがいいのなら、その人の宣伝を一番に書けばいいのになぁ。
 
 震災以降、日本経済は大変な時期にあります。同じ日本人、お金を使うなら日本に落としたい。どうして、違う歌手に変えたイタリアの劇場に、これだけのお金を支払わねばならないのか、納得がいきません。

 怒りと無念さは、どうしても押さえきれません。

 蛇足ながら、バリトンもキャンセルで変更されています。
「「清教徒」リッカルド役変更のお知らせ
「清教徒」に出演予定でしたアルベルト・ガザーレですが、重度の腎臓結石による痛みと発熱のため、医師より15日間の安静が必要との診断を受け、来日できないこととなりました。つきましてはリッカルド役は、ルカ・サルシが演じます。何卒ご了承いただけますようお願い申し上げます。
 なお、今回の出演者変更に伴うチケットの払い戻し、公演日・券種の変更はお受けできません。何卒ご了承を賜りますようお願い申し上げます。2011年9月2日 フジテレビジョン」

 主演者が3人も入れ替わった「カルメン」に比べたらまだましかもしれません。ボローニャとフジテレビは、ここまでして、高額なチケットの払い戻しをしたくなくて、しかも歌手たちのコンディションのつけを私たち日本人、何も文句を言わない日本人におしつけたいのでしょうか。

後述:しかし随分腹を立てている文章なので、少し修正加えておきました。(2023.8)
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